6月も下旬になり、3月決算の株式会社の株主総会が連日数多く行われております。
人事異動や海外進出で、新たに海外に赴任される方も多いことと思われます。
役員で自社株等をお持ちの方、または有価証券を多くお持ちの方は国外転出時課税(いわゆる出国税)の対象となり、お持ちの有価証券の含み益に課税がされる可能性がございます。
出国前に、ご自身の資産を今一度ご確認してはいかがでしょうか。
国外転出時課税制度のあらまし
平成27年度税制改正により、平成27年7月1日以後に1億円以上の有価証券等を所有している居住者である個人が国外転出をする場合には、保有する有価証券等の含み益に所得税が課税されることになりました。
※有価証券等とは、有価証券の他、匿名組合持分、未決済の信用取引等も含まれます。
この制度の対象となる方は以下の①と②の両方に該当する方です。
対象となる方は、所得税の確定申告等の手続きを行う必要がございます。
① 所有する有価証券等の価格の合計額が1億円以上であること
② 原則として、国外転出をする日前10年以内に、国内に5年を超えて住所または居所を
有していること
従来は、有価証券を保有したまま国外転出したとしても、出国時の確定申告で含み益に課税されることはありませんでした。ただ最近はタックスヘイヴン等、国外における課税逃れが問題となっており、今回の改正は、その対策の一環と考えられます。
上記に該当される方は、申告漏れに気を付けて頂けますよう、お願いいたします。
申告納税手続
① 納税管理人を定めないで国外転出をする場合
国外転出予定日の3か月前の価額により有価証券等の譲渡があったものとして、
国外転出時までに確定申告・納付をしなければなりません。
② 国外転出までに、税務署に納税管理人の届出をした場合
国外転出予定日の価額により有価証券等の譲渡があったものとして
翌年3月15日までに確定申告・納付をしなければなりません。
※②で担保を供した場合、5年~最長10年の納税猶予の適用を受けることができます。
納税猶予等の適用につきましては、納税管理人の届出が前提となります。
国外転出時までに届出を行う必要がありますので、届出期限にはご注意ください。
贈与・相続等により国外居住親族等に有価証券等が移転される場合
・平成27年7月1日以後、贈与者が国外居住親族等へ有価証券等の贈与を行うときは、贈与時に、これらの有価証券を譲渡したものとみなして、含み益に所得税が課税されることになりました。
・また、相続等により被相続人から、国外居住親族等へ有価証券等の財産が移転されるときも、贈与と同様に含み益に所得税が課税されることになりました。
それぞれ贈与者・被相続人は確定申告(準確定申告)を行う必要がございます。
また、この制度の対象となる贈与者・被相続人は贈与等の時点で1億円以上の有価証券等を有するなど、国外転出時課税制度とおおむね同じとなっております。
いずれの制度も出来て間もない制度ですので、届出漏れ、申告漏れには十分ご注意ください。
このコラムは、平成28年1月25日時点に施行されている法令等により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。