消費税の、8%から10%への増税が平成31年10月1日より予定されておりますが、増税と同時に食品等の対象品目への税率が軽減される軽減税率制度が開始されます。
軽減税率制度の導入後、事業者はどのように消費税を計算する必要があるのでしょうか。
軽減税率適用後の消費税の計算方法
まず現行の制度では、消費税額の納付税額は、次の2つの計算結果の合計によります。
1.消費税(国税) = 〈課税期間中の課税売上高×税率〉 - 〈課税仕入高×税率〉
2.地方消費税 = 消費税(国税)×17/63
・課税期間とは消費税の計算期間(原則として個人は暦年、法人は事業年度)のことです。
・課税売上高・課税仕入高はいわゆる税抜価額のことです。
・税率は2019年9月30日まで終了する課税期間であれば、6.3%となります。
こちらが、軽減税率制度が始まったら、次の計算結果の合計によることとなります。
1.消費税(国税) = 〈課税売上げにかかる消費税額〉 - 〈課税仕入れ等に係る消費税額〉
2.地方消費税 = 消費税(国税)×22/78
・課税売上げに係る消費税額は、標準税率分と軽減税率分に区分した課税標準額に
それぞれの税率を乗じて計算したものを合計します(下記1-1と1-2の合計)。
1-1標準税率分 標準税率対象品目の課税売上げの合計額(税込)×100/110×7.8%
1-2軽減税率分 軽減税率対象品目の課税売上げの合計額(税込)×100/108×6.24%
・課税仕入れ等に係る消費税額も同様に、下記1-3~1-5の合計となります。
1-3標準税率分 標準税率対象品目の課税仕入れ等の合計額(税込)×100/110×7.8%
1-4軽減税率分 軽減税率対象品目の課税仕入れ等の合計額(税込)×100/108×6.24%
1-5外国貨物の引取りに係る消費税額
※簡易課税制度の適用事業者は、改正前、改正後のそれぞれにおいて、課税仕入れ等に係る消費税額をみなし仕入率に基づいて計算いたします。
※売上返還等、貸倒が生じたときはそれらに係る売上に乗じた税率に基づき、税額控除します。
中小企業者の税額計算の特例
軽減税率制度が実施される平成31年10月1日から、売上または仕入を軽減税率と標準税率に区分することが困難な中小企業者(基準期間における課税売上高が5千万円以下の事業者)に対して、売上税額または仕入税額の計算の特例が設けられています。
売上税額の計算の特例により、次のいづれかの計算方法により売上税額を計算することができます。この特例は、平成35年9月30日まで適用が可能です。
1. 課税仕入れを税率ごとに管理できる卸売業・小売業を営む中小企業者(簡易課税を適用しない事業者に限る)
⇒当該事業に係る税込課税売上高×小売等軽減仕入割合※
※...当該事業に係る軽減税率対象品目の売上にのみ要する税込課税仕入れ÷当該事業にかかる税込課税仕入れ
2. 1の特例を適用する事業者以外の中小事業者
⇒税込課税売上高×軽減売上割合※
※通常の連続する10営業日の軽減税率対象品目の税込課税売上÷同期間の税込課税売上高
3. 1,2の割合の計算が困難な中小事業者(主として軽減税率対象資産を販売する中小事業者が対象)
⇒50/100
仕入税額の計算の特例により、次の方法により仕入税額を計算することができます(平成32年9月30日を含む課税期間の末日まで適用が可能)。
課税売上げを税率ごとに管理できる卸売業・小売業を営む中小企業者
⇒当該事業に係る税込課税仕入れ高×小売等軽減仕入割合※
※...当該事業に係る軽減税率対象品目の税込課税売上÷当該事業にかかる税込課税売上
また、この方法に代えて簡易課税制度の届出の特例を適用することができます。この特例により、消費税簡易課税制度選択届出書を提出した課税期間から簡易課税制度の適用が可能です。
※平成31年10月1日から平成32年9月30日までの日を含む課税期間が対象です
※簡易課税制度の特例を選択した場合は、2年間継続適用する必要がございます。
消費税の軽減税率の開始まで、残り約8カ月となりました。レジの準備など、出来る対策を少しずつ始めて頂けたらと思います。
このコラムは、平成30年12月31日時点の法令により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。