法人税法では会社の事業を分割し他の会社に資産負債の移転をした場合、原則として分割法人から分割承継法人に対して時価により資産負債の譲渡がされたものとして時価と簿価の差額に課税がされます。
しかし、一定の適格要件を満たせば時価による譲渡ではなく簿価による引継があったものとして課税されません。
では次のケースはどうでしょうか。
事例研究
事業再生中のA社(株主:乙)が受皿会社となるB社(株主:乙)へ会社分割により事業を移転し、その対価としてB社がA社株主である乙にB社株式を発行した。 A社はその後残った債務等を整理し解散した。 |
分割法人と分割承継法人が同一の者により株式を100%保有されている場合は、通常株式以外の対価の交付がなければ適格分割に該当します。
しかし今回のケースのようにすでに分割後の解散が予定されている場合、乙は分割時にA社の株式を保有していない場合と同様のものとして取り扱われます。
そのため今回のケースで適格分割型分割に該当するためには次のすべての要件を満たす必要があります。
① | A社の80%以上の従業者をB社が引継ぐこと |
② | 分割後もA社から引継いだ事業がB社で継続されること |
③ | 分割事業と分割承継事業が相互に関連するものであること |
④ | A社とB社の一定の役員が分割後にB社の一定の役員として経営に従事すること |
⑤ | 乙が分割により交付されるB社株式を継続して保有する見込みであること |
上記③はA社から引継ぐ事業に関連する事業をB社が分割前から営んでいた場合に該当するものであり、B社は分割時まで事業を行っていないためこの要件を満たしているとはいえません。
そのため今回のケースは適格分割型分割には該当せず移転資産負債は時価課税されることになります。
今回のようなペーパーカンパニーを利用した組織再編は、適格要件に該当せずに課税される可能性があるため十分に検討したうえで実施することが望まれます。
このコラムは、平成27年9月25日時点に施行されている法令等により作成しているため、今後の法改正により異なる取り扱いとなる場合があります。
また、専門的な内容を判り易くするため、敢えて詳細な要件などを省略していることもあります。本コラムに記載されている内容を実行する際は、当事務所までご相談ください。